雑記

感想や考えたことを書きます

『映画刀剣乱舞』を見て考えたこと

ネタバレを含みます。

たいへん薬研贔屓の感想です。史実に絡めたところはかなり適当で、妄想も入っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薬研……とても綺麗な薬研だった。いつも真剣に前を向いている表情や、戦い方やしぐさ、座り方も薬研らしかった。
薬研がいつも、感情的にならず、冷静に真摯に物事に取り組むのは、最善を尽くしたいと強く願っているから。織田信長足利義満といった不可能を可能にするような主たちを見てきて、自分もまた奇跡を起こしたことのある薬研は、個々の力の可能性をすごく信じている。だから、きっと来るはずの千載一遇の好機や危機の前兆を見逃さないため、いつも前を向いて備えている。そんなふうに見えた。


秀吉と安土城……安土城を壊す秀吉という、史実よりしっくりくる光景を目にできて、とても感慨深かった。
安土城の最上階は金閣に似せたという説を読んだことがある。金閣を建てた足利義満は、足利将軍中最大の権力を持ち、自ら国王と名乗った。薬研もその義満の刀だった。
本能寺の変のあと秀吉は、信長の葬式で不動を掲げ、大阪城をわずか一年で建て、数年後に刀絵図の一番はじめに薬研を載せる。だが不動国行と薬研は、その後いつのまにかなくなってしまう。信長の遺物は少しでいい、と顧みられなくなっていったのだろうか。


秀吉のパフォーマンス……信長の死を知って大泣きをするシーンを見て、すごく面白く思った。パフォーマンスをしながら、同時に心から悲しんでいて、一瞬のあいだにものすごい計算もしている。その後も、冷徹さと人間らしさがくるくる入れ替わる秀吉は、見ていてすごく惹きつけられた。

最後に安土城の跡で刀を拾ったときは、純粋に悲しんでいるように見えたが、刀の目釘穴が二つだったので、宗三か不動国行の可能性が高い。となると、泣きながら、天下を確実に手に入れるための手順を考えていたのかもしれない。あの刀が不動国行だったら、このあと行う信長の盛大な葬式で、位牌と不動を掲げて、自分が後継者であることを誇示する計画。

でも、映画の副題の継承が、天下人の継承にもかかっているなら、あの刀はきっと、秀吉が持ち、その後も天下人の手を渡っていった宗三だろう。


信長……人外軍団を率いる信長が見れて楽しかった。秀吉が自分を裏切らないと信じているポジティブなところも、らしいと思った。信長は何度も裏切られたけれど、それほど疑心暗鬼にかられない。明るくポジティブでないと、天下の夢なんて見られない。
豪胆さと強い自制心と温かさが感じられる理想の信長だった。こんな人の懐にずっといたら、別れるときはさぞ辛かったろう。
秀吉と信長、刀剣男士達の元主を、いかにもその人らしく、かつ、とても魅力的に表現してくれて有り難かった。


長谷部……温泉で秀吉が「信長を討つ」と言ったときにすごく怒っていたのが印象的だった。攻撃されたというのもあっただろうけど、それだけじゃない。劇中ずっと審神者と仲間に集中していた長谷部の、信長への気持ちが表出した瞬間に見えた。


骨喰……骨喰が登場してしばらくのあいだは、ほかの刀剣男士が彼ららしく活き活きと動いているなか、一人だけぼーっとしていて損な役回りだな、と思っていた。でも状況に流されず、納得するまで考え続ける頑固さは、すごくかっこいい。振る真似だけで骨を砕く刀だからこそ、生半可な気持ちでは振るわない。その重みがいい。


安土城での戦闘……戦闘が続き、男士たちが息切れしだしたのを見て、怪我しなくても戦ってるだけで疲れるんだ、というすごく当たり前のことを忘れていたことに気づいた。


無銘……無銘の正体が薬研だったらどうしよう、とずっとはらはらしていたのだが、無銘の話は最後の最後のサプライブで、さっと終わった。気持ちの良い幕切れだった。


脚本……とにかく面白かった。歴史物なのに新鮮な驚きがあって先が読めなくて、でも奇をてらいすぎていない。シンプルすぎず、複雑すぎず、細部まできちんと統一された、珠玉のような物語だった。


最後……夢沼の住人なので、小さい審神者ににこにこ笑いかける薬研が見れて幸せだった。それまでずっと、きりっとした顔か悲しい顔しかしていなかった薬研の、明るい笑顔がとてもよかった。ほっこりしたところで、エンディング曲が流れてきて、かっこいい終わり方だった。